法然上人は建暦2年(1212年)正月25日、いまから798年前に亡くなられました。来年800回忌を迎えます。
その亡くなられる2日前の1月23日にお弟子方に請われて御遺訓(ごゆいくん)、一枚起請文(いちまいきしょうもん)を書かれます。
この御遺訓の最後のことばは、
「ただ一向に念仏すべし。」
であり、この言葉はひとり一人の心に、年月とともに生じるものがあります。以下はその本文です。
元祖法然上人御遺訓 一枚起請文
唐土我朝(もろこしわがちょう)に、もろもろの智者達の、沙汰し申さるる観念の念にもあらず。また学問をして、念のこころを悟りて申す念仏にもあらず。ただ往生極楽のためには、南無阿弥陀仏ともうして、うたがいなく往生するぞと思い取りて申す外には別の仔細(しさい)候(そうら)わず。
ただし三心四修(さんじんししゅ)と申すことの候うは、皆決定(みなけつじょう)して南無阿弥陀仏にて往生するぞと思ううちにこもり候うなり。
この外に奥ふかき事を存ぜば、二尊のあわれみにはずれ、本願にもれ候うべし。念仏を信ぜん人は、たとい一代の法をよくよく学すとも、一文不知(いちもんふち)の愚鈍(ぐどん)の身になして、尼入道の無智のともがらに同じうして、智者のふるまいをせずしてただ一向に念仏すべし。
証のために両手(りょうしゅ)印をもってす。
浄土宗の安心起行(あんじんきぎょう)この一紙(いっし)に至極(しごく)せり。源空(げんくう―法然上人)が所存、
この外に全く別義を存ぜず、滅後の邪義をふせがんが
ために所存をしるし畢(おわ)んぬ。
建暦二年正月二十三日 大師在御判
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