本年春彼岸会法要中に、3月11日の大震災被災物故者霊位の中陰回向を勤めました。
今後この霊位に対して善想寺檀信徒の皆様がどのように御守りいただくかを申します。
回向壇に二つの大きなお位牌がございます。
一つは「善想寺檀信徒各家先祖代々霊位」のお位牌でありこれは檀信徒各位のお守りする各家先祖代々のお位牌を集めて一つのお位牌にしたものです。
もう一つは「大東亜戦争戦死病没諸英霊位」であり、この二つのお位牌が位牌壇の中心に安置されています。
このお位牌は先祖代々のお位牌とはいろいろな違いがあります。霊位を守る子孫の有無を問わず、またその霊位の宗教を問わず、また通常の仏教儀式(枕経、戒名授与、通夜、本葬など)を行えない霊位(御遺体)が大半を占めるこの仏教儀式の有無を問わず私たちが守るべき霊位として普段は本堂脇檀に二つのお位牌を並べて安置しています。
英霊の50回忌を終える平成6年(1994年)にこの英霊のお位牌を思い、今後も同じように御守りすべきお位牌と考え、「善想寺檀信徒各家先祖代々霊位」のお位牌と今後も並べておまつりすべく50回忌を機にお位牌を新調しました。
天災事変による横死者の霊位は老病死による霊位とは区別すべきところがあります。
戦争をはじめ天災事変は人々が、また社会がこの事実を永く記憶し人間を守ることを忘れないことが重要であり、この事実は横死者の心、霊位を忘れず守ることにより人間を守る道筋を具体化できるものであり横死者の霊位も私たちを見守って下さると思います。
また私たちの先祖と同じように横死者の霊位と私たちの間には功徳が生じるものでなくてはなりません。
その理由は、例えばこの私はいつも頂いている食事のすべてに、自分で作り育てたものはありません。
衣食住すべてにおいてそうと言えます。また今、皆さんが参列なさっているこの本堂は文政年間に建立されたものです。
天明の大火で京の半分が焼失、その50余年後に多くの人々の御苦労により本堂は再建されました。
このように時と場所を超えて人間と人間の間には功徳が生じ続けています。
私たちが横死者の霊位を先祖の霊位と並べ盆施餓鬼、彼岸会法要に回向することによって横死者の霊位に対して私たちも功徳を積むことができます。
「大東亜戦争戦死病没諸英霊位」のお位牌は申しましたように「天災地変 殉難横死」と「戦災死者 怨親平等」を並べて記すべく「大東亜戦争戦死病没諸英霊位」の両側に書き加えます。
これからも震災で亡くなられた方々の霊位に対して僧侶としてすべきことを考えてゆきます。
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